都立高校準常勤講師(国語・書道) 安田倫子
毎週火曜日3、4時限目(1時限は50分)2単位(実数、年間42時間)
受講者3修制2部の授業。14名(内、2名退学、5名長期欠席)最終授業6名出席
使用教科書「国語表現T」教育出版、
基礎からの「国語表現の実践」京都書房、
「パスポート国語必携」桐原書店、
(これらの教科書は、3年間「国語」全ての授業で活用する。)
辞書使用は各自任意。実際は携帯の辞書使用が多かった。
教師用として、担当独自に新総合「図説国語」を使用。
最終授業として2008年2月17日、3、4時限目に、課題を出す。
【課 題】
1.国語表現の授業をふり返っての、反省、感想、印象に残った授業内容を含めて、小説風に原稿用紙3枚に書く。
2.題名は内容に添って各自で考えてつける。
(追記)本文中、実名は丸○○〇に変えた。句読点は分かり易く、読み易くするために、加えた部分がある。その他は原文まま。
生徒作品を一読してもらえば、どのような授業の実践だったのか、生徒の学習し得たものは何だったのか、受け取ってもらえると思い、記録として公表することとした。文章の公表は事前に匿名で、という条件付きで本人に許可を得ている。
▼ ありがとうございました。
1年6組 ○○ ○○○ (女)
火曜日の授業での中で一番大変で難しい事を教えて下さっているのが、『○○○子先生です。』私が初めて先生を見た時の事を今でも覚えています。国語表現の授業をとった時に私は先生の名前を『○○』としか聞いていなかったので、男性の先生が教えてくれるのかと思っていました。実際に授業が始まると女性の先生だったので驚く気持ちと安心する気持ちが同時に私の中に入ってきました。安心する気持ちというのはきっと男性だからとか女性だからとかは特にないけど個人的に女性の方が落ち着くのです。
先生は毎回の授業でいろいろな事を教えてくれました。書く事・言う事・覚える事などを、大人になっても使える様々な事を国語表現の授業で習いました。
次に国語表現の授業では私以外にも習う人々がいました。初めは男子生徒が二、三人いたのですが、日がたつたびに消えてしまってあげくの果てには、さぼる人までいました。
そんな中私はボーとしてました。黒板にはたくさんの文字が書いてありました。私はいつもいつも同じ事をしていました。先生はみんなの前に立ったり、座ったりしていました。時々私や○○さんや○○さんと一緒にお話したりすることもあって、とても楽しい時間もありました。
暑い日のことです。みんなが来なくて先生と私と二人の生徒しかいない事がありましたね、教室の中もすごく暑くて先生は大変だったと思います。でも先生は一生懸命私に教えていました。
寒い日でも暑い日でもみんなでやる二時間の授業はとても楽しかったです。
国語表現が火曜日で良かったと思います。何故なら月曜日は一週間の中で一番学校に行きたくならない曜日なのです。もしも国語表現が月曜日にあったら私は、あまり参加しなかったと思います。私は一回も国語表現の授業を休まなかったのには理由があるのです。それは・・・早く起こされるのです、おばあちゃんに。おばあちゃんは私が火曜日に早く学校に行く事を知っています。だからどうしても私の部屋におばちゃんが来て無理やり起こすのです。そして学校に行きます。その行動が毎週の火曜日・水曜日・木曜日に行われるのです。おばあちゃんのおかげで私は火・水・木一回もさぼった事はありません。バスの都合で遅刻することはありましたけどね。二年生になってもおばあちゃんに頼んで起こしてもらおうと思います。おばあちゃんにも感謝です。
国語表現の事に戻りますが○○先生にはいろいろな事でお世話になりました。『一年間、国語表現の楽しさ、難しさを教えて下さってありがとうございました。』二年生になって何か縁がありましたらよろしくお願いします。いままで本当に本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
(評)題名がいいですね、おばあちゃんにも感謝。ただ、文章にする時は「祖母」とした方がいいですよ。高校生ですから。
▼ 「○○○子先生の巻」
1年5組 ○○ ○○ (女)
ある日、ある教室では、「国語表現の間」という不思議な教室があり、その教室では、ある時は相談、ある時は国語。そしてその実体は国語表現。つまり、自分の意見を言うという、表現力を上げ、自分の毎日の中で、違って使っている語などを、この時間で学び、自分の将来に役立てるためにある間、という所だ。
さてさて、その間を少しのぞいて見よう。『〜さん。』「はい。」『〜くん。』「はい。」『〜さん。』「・・・あ、はい。」『ちゃんと返事してね。』『では、授業を始めます。』「さて、私は○○・・・○・・・子といいます。」と、言いながら、黒板に書いていく。
この授業は、週一度開かれる。火曜日しか開かれない謎の間である。この間にくる人々は、皆、間違って使っている語ばかりを使っていて、この間に、習いに来た人ばかりです。
その授業の担任の先生はとても和風な感じの人です。
私の母とは大違いですよ。
すき間より大吹雪。そして、いきなり山火事。あちちのちっ。丸焼き、口は災いの元。まさにそれ。そして、今日も、かみなりが直撃し、こげこげのまま寝る・・・。○○先生は私にとって第二の母ともいえるでしょう。天気予報は雪のうち、山火事。冷えた地面にあつ〜いあつ〜いおゆをかけるのと、同じ。
さて、ここで問題です。冷えている所にあついおゆをかけると、どうなるでしょうか?答えは、「雨降って地固まってひびわれて、砕ける」でした。長い。ちょっと遠回りしたが、戻ります。
○○先生との授業は、とても、楽しくで、人生の勉強と言っていいほど良い授業です。今日は、晴れ、快晴です。これほどうれしい天気はありませんね。
この授業で学ぶ事、それは、ズバリ、自分自身を磨くための意思について。基本です。
生きとし生ける物、すべてに意味があります。意味がないのなんてありません。理解力、表現力、想像力など人間にはあらゆる力がある。それが他の動物との違い。人を尊重する事も、人をほめることも、愛することも、泣くことも、時にはケンカすることもある。それで私はいいと思う。それが人間だから。人間だもの。違っていいじゃない。人間だもの。泣いたって、こけたっていいじゃない。無限の可能性をひめる生き物、人間だもの。そうして、生きる意味は、自分自身を成長させ、たくさんのことを学び、日々の生活をきちんと、送ることである。そうすることが出来るのは、唯一つ、人間だけだから。この授業で、それを学んだような気がする。
人にとって何が大事なのか、それをこの一年間で学べたと思う。
私はまだ世間を、この世界を知らない。地球以外の惑星に行ってみたこともない。が、これだけは、分かる。自分が生きている事。自分を必要としてくれる人達がいる事。これらを知ることはこれからの人生を生きるための準備だと思う。
一年間、出合えた事に感謝して、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
また会う日まで。
(評)時代劇風小説で面白いです。授業の内容をよく活かせています。
▼ 一年の思い出
1年5組 ○○ ○○ (女)
火曜日は朝起きるのがとても辛いけど休むと単位がもらえないので頑張って一年間学校に行きました。
国語表現の授業はとても難しくて、難しい漢字や言葉などが沢山あって覚えるのにも苦労しました。でも先生は黒板にキレイな字でわかりやすく教えてくれました。
最初ごろまではノートを取っていたのですが毎回ノートを忘れてしまうので二枚目で終わってしまいました。私の苦手な「絵を言葉に変える」は、知識や情報・関心などの説明をして工夫をしないといけないので嫌いでした。
私は説明をするのが苦手なので絵を言葉にするのはとても苦労しました。
私が国語表現で一番好きなのは漢字です。でも漢字の音読み、訓読みは苦手なのでがんばりたいです。
国語表現で一番大事なのは言葉だと思いました。
なぜならば、言葉、ひと言で相手を傷つけてしまう事が多いので気をつけています。中でも喧嘩した時など私は物事をズバッと、はっきり言ってしまうので気をつけたい所です。友達との喧嘩はあまりしませんが一回その喧嘩で友達を失くしてしまった覚えがあります。ですから言葉は良い意味で怖いと思いました。これから私達は大人になって行くので言葉には気をつけて行きたいです。
話が続かないので次の話に変わります。
一番最初の国語表現の授業で友達が出きた事を思い出します。○○さんと○○さんです。私は、はずかしがり屋で何も声をかけられなくて○○さんが私に声をかけてくれたのでとても嬉しかった事を思い出しました。
わからない所を教えてくれたり、いろいろ楽しく授業が受けられました。三修制を取っていると良い事が続々と増えました。でも、三修制を取っている人で四年制に変わってしまった人もいたのでとても残念に思いました。
今までの授業を振り返って見ると一年はあっという間に感じました。それに国語表現は、テストが無い代わりに提出物を出せばテストの代わりとなるので本当に国語表現で良かったです。
さらに○○先生はとっても明るくておもしろい先生だったので、明るく楽しい授業になったと思います。
一年間本当にありがとうございました。
(評)自分の体験をもとにして、ちゃんと言葉に出せて、良い文章が書けました。
▼ 国語表現を受けて
一年 ○○ ○○ (男)
この授業は、ずっと手を抜いてきてました。それはなぜ?だるいめんどいなどなどですが、国語表現は自分で考えた物を答えにする事が多いので、すごく苦手です・・・今書いている作文もはっきり言ってめんどいですヤです帰りたいです。でも書きます。それは単位がほしいからです。とりあえずーーではなく二年生に上がり、ここを出て専門学校に行きたいです。なので授業はでます。さぼったりはあまりしません。でもちこくはよくしますし、最近はおなじ○○せんせいの授業、書道をがんばってます。このちょうしで国語も・・・・・・と言いたいが今日で最後だそうなので今作文を書いてます。このあと書道があるのでしっかりとまじめにうけるつもりです。
(評)あんまりサボリが多いのでず〜〜と心配でした。(出席していても課題に取り組まない。@音楽を聴く、A携帯をいじる、B寝る、のどれかでしたから。)君の望みが叶うといいね。
▼ 国語表現をうけて
1年5組 ○○ ○ (女)
国語表現、私はこの授業から沢山の表現の仕方を知った。
初めて授業を受けたのは去年の春だった。正直、初めてこの授業を受けた時私は、国語も苦手なのに何で選んでしまったのだろう。と、後悔をしていた。
私は昔から国語が嫌いだった。なぜなら、答えがいくつもあり、自分の考えを主張しなければならなかったからだ。私は、自分の考えを主張するということに抵抗があった。
そんな私の気を知ってか知らずか、最初の授業はスピーチだった。
スピーチは私が最も嫌いな中の一つだった。
テーマは自分を紹介するという内容だ。私はできるはずがないと思った。結果、ただの思い出話になっていた気がする。私は自分の力の無さに落ち込んだ。
一週間後、国語表現の授業を受けるため、いつもより少し早めに家を出た。電車に乗り、少し考えてみた。私は自分の意見を主張するのを恥かしがっているだけじゃないのかと。
学校につき、国語表現の授業を受けていた。自分を出してみよう。私はそう思い今日の課題の授業の白い紙に自分の意見をぶつけてみた。書き終わった後、私はとてもすっきりした気がした。それと同時に恥かしがっていた自分がもったいないと思った。しかし、その時はまだ、自分の全てを紙に書くことをためらっている自分もいた。
私は思い出した。先生がある時言っていた『人の意見を頭から否定してはいけない』ということを、その言葉は何気なく耳にしていた事だった。けれどもその言葉を思い出した私はすごく楽になった気がした。きっと私は意見を主張するのを恥ずかしがっている気持ちと共に、意見を否定されることを恐れていたのだろう。
多くの課題をこなしていく中で、少しずつだけれど自分を出せている気がした。それはたぶん、あの言葉があったからだと私は思った。
一言で気持ちが楽になるなんて言葉はすごい力があるのだと私は思った。
国語表現は他の授業とは違い普段の生活で役立つことまで学べたと、私は思う。同時に何事も挑戦してみることが肝心なことだということも知った。
(評)髪を黒に戻して、アルバイトも決まっておめでとう。授業の課題もよく理解できています。この調子で、広く社会にも通用するような自分磨きを続けて下さいね。
▼ 国語表現
1年4組 ○○ ○ (女)
私は三学期から荻窪高校に転入してきた。この学校では選択科目を取らなきゃ行けないので、私は国語表現を選択した。
そして転入した次の日からすぐに授業が始まった。その日の朝、時間割を見ると一時限目(注)から国語表現の授業があった。私は学校に着くとすぐに職員室に行き、
「国語表現の教室はどこですか?」
と聞くと男の先生に
「四階の一番右の教室だよ。」
と教えてもらい、その教室に向かった。教室に入るとまだ誰も教室にいなかった。寒かったので暖房をつけて空いている席に適当に座った。席に着いてから色々と考えていた。この学校に来てまだ二日目だから友達もいなくて、この先友達をつくれるかなど考えていると、一人の女の子が教室に入ってきた。その子は教室に入ってすぐに私を見て
「誰だこの人?」
という顔をしながら席についた。今まで見たことのない人が同じ教室にいるのだからそう思うのも当然である。しばらくして、男の子と女の子が教室に入ってきて、それに続いて先生が入ってきた。先生は女の先生で、教室に入ってすぐに
「転入生はどなた?」
と言われたので私は手をあげた。そして先生に自己紹介してと言われたので、軽く自己紹介をした。皆の視線が集中して、少し恥ずかしかった。
私の自己紹介が終わると、授業が始まった。すると先生が私に一冊の冊子を渡してきた。その冊子には「桃太郎」と書いてあり、中を見ると桃太郎の台本になっていた。
私が疑問に思っていると先生が説明し始めた。「国語表現では表現力を高めるために、演劇をやっているんです。だから、○○さんには犬役をやってもらいます。」
と言われ、流れるままに私も演劇に参加することになった。その時、また二人の生徒が教室に入ってきて先生も入れて六人で桃太郎をやることになった。私は台本をみながらだったが、表現力を高めて頑張った。こういう風な国語表現の勉強のし方もいいなと思った。
(注)1時限目とは、3修制の授業では、全日制の3,4時間目が彼らの1,2時限目に相当します。
(評)「小説風に書く』という課題によく合ったものがかけました。とてもすばらしい文章です。