水と緑の地-----------
そこから車で1時間半の同じ地方は映画『グリーンデステイニー』(Green
Destiny)の撮影場所だったと聞き、画面の中の湖や竹薮の美しさを思い出した。通訳の趙さんの実家はその中心地の池(人口の池で600年前に作られた)の傍にある、300年経った家だそうだ。アン・リー監督、チョウ・ユンファ、チャン・ツィーイー主演のこの映画は活劇場面も、風景の美しさも他とは群を抜いており、2000年にカンヌ映画祭で絶賛されて以来、明くる年のオスカーでも評価された。世界的に認められた作品となった。武術に励んでいた私のかつての現役時代(青春時代)20年間を思い出し、武人としての血が騒いだ作品だ。近いうちに訪れる縁もあろう。
これらの地に足を踏み入れたときから、気功の技をいちいち出さなくてももうすでに、大きな氣に包まれて、風景と私とはずーっと一体になっていたような氣がしていたのは錯覚などではなかったはずだ。
行く先々で、労宮(ろうきゅう・掌の真ん中あたり)の熱は高まり、びりびりして、しかし気持ちが落ち着いていて、瞑想をした後の様に爽やかな気分が続き、体内からエネルギーが湧き出てくる実感が始終あった。
歴史と調和と-----------
保存されている町並みも、茶畑も、水牛も、軒に干された塩詰めの魚、肉も、新しく作られた街路樹も苺のビニールハウスも、しっくりと調和しており、何もかも併せ呑みながらゆったりと進んでいく巨大な龍、中国の姿を垣間見た思いがした。
農村の過疎化という重大な問題を孕みつつ、額に汗して、段々畑に竹の竿に水や肥料を積んで登り、山で駕籠を担ぎ、月に現金をほとんど使わない自給自足の生活をしている多くの人々と、大都会の喧騒の中で簡単にアルバイトのできる若者達と、インターネットを駆使し、事業で成功して外車に乗って高速道路で郊外の大きな家に通っている人も、みんな、みんな現在の中国を映している人々だった。
旅行者の一員として、その大きな現代の空気の只中に僅かに数日立っただけだったが、氣の世界を通してますます自己の精進努力を誓う気持ちが強くなったことは言うまでもない。
黄山気功研修旅行に参加させて戴けたことに心から感謝している。