「みなさまこんにちは。早速ですが、今私が男の人と向かい合います。そこで、片手で男の人の胸の中心を押しますので見てください。どうでしょうか、男の人は動きますか?」
この声から講座ははじまりました。
それぞれ、学生に前に出てきてもらって、大の男を手で押してみる、という動作から体験してもらおうというわけです。
体験後の学生の意見は「重かった」「動かない」「手が折れる」など、さまざまです。如何に自分達が実際の場面に慣れていないか、経験がないままだとどうなってしまうのか、など具体的に示しつつ、講座を進めていきました。配布したレジメのまとめは以下の通りです。
レジュメ-----------------
●あなたは「女子大生」というだけで犯罪の標的になりやすい存在であることを知りましょう。(そういう存在であることと、顔の美醜、スタイル、人格、性質、優しさ、などは一切関係ありません)
●まず、出来る限りの努力をして、その場から逃げ出しましょう。相手との距離を置くことができれば、あなたは助かるのですから。ぼんやり立ちすくんでしまうなど、相手に「犯罪の続きをどうぞ」と言っているようなものです。脚が震えても、頑張って駆け出しましょう。
●しかし、銃を構えていて「動くな」の声を出している時には話は別です。みなさんは銃など見たことも無い人がほとんどでしょうから、本物かどうか確かめようがありませんね。まず、両手を挙げてじっとするしかありません。
●女性が格闘で男性に勝てるでしょうか?
勝てません。男女の力の差は歴然とあるのです。ここで「男女平等」などと、人権を持ち出すのは勘違いです。犯罪者が「男」で「女」を襲う場合は100%暴力という「力」で襲ってきます。
ですから、予期せぬ時の、まるで事故のような理不尽な犯罪に遭遇してしまって、命を落とす、レイプされる、そこまで行かなくても金品を盗られるなどの緊急事態に対応できるだけの心構え、心得を学習しておくことが大切です。一度でも学習しておけば、いざと言うときに自分が助かる可能性ができるきっかけとなるのです。
●まず、大声を出しましょう。「キャー」「助けて〜」ではなく、@「火事だあ」A「泥棒!」B「助けて〜」の順番です。最近では、「キャー」「助けて」の声に家の中から外に出てくる人は稀だと聞いています。単なる叫び声は、若い男女が戯(たわむ)れているだけだろう、と勝手に判断して、面倒くさいことに拘(かか)わりたくないからです。世間の風潮として残念ですが、現実問題として仕方がありません。ところが「火事だ」の場合はたいていの家から現場を覗こうと顔を出します。自分の家の近くかそうでないか確かめないと安心できませんから。顔を出してくれたら、改めて助けを呼べるでしょう。
●その場になったら、怖くて声を出すこともできませんが。
やはり、声を出せるように、このような講座を通して日頃から練習をしておきましょう。犯罪者は大声を出されて第三者に自分の犯罪を知られるのが何より怖いのです。ですから、必ず「騒ぐな!」「静かにしろ!」「声を立てたら殺すぞ」と脅してくるのです。このことが何よりも声を立てられることは、犯罪者にとっての都合の悪いことだということを証明しています。
●「防犯グッズ」は活用の価値があります。
それでも声が出ないという人のためには「防犯グッズ」があります。
防犯ブザーや笛を携帯やバッグのストラップにして持ち歩きましょう。しかし、防犯スプレーは感心しません。バッグから取り出す暇もありませんし、あわてるあまり、間違って自分にかけてしまった、相手に取られてしまい、自分にかけられた、など被害者の声を耳にします。この場合、携帯も簡単に相手に奪われてしまうことが多いようです。夜道をひとりで歩かなければならないような犯罪に巻き込まれかねない状況のときのために、ブローチとしてつけておくのもいいですね。
反撃の大切さ-----------------
●反撃したら、相手が傷つくのではないでしょうか?傷害罪になるのでは?もっとひどいことをされるのでは?
相手があなたの発した反撃で「痛み」を受けている間こそ逃げるチャンスです。一刻も早く逃げるのです。襲われた女性が傷害罪に問われることはありません。痛くて可愛そうだなどと、考えるのは間違っています。初めから、相手はあなたを傷つけるために近付いているわけですから、自分を守るためには「自己防衛」は当然です。どうってことありません。相手が自分に「気を遣って」くれたら、犯罪者にはなりません。そんな相手にこちらが「気を遣う」ことは全く必要ないのです。助かるためには「ためらうことなく」「相手の心配をするより、自分の助かること」の方を考えましょう。相手の怪我を気にしない事があなたの助かる道です。相手との距離が少しでも取れれば、助かる道は開けてきます。距離が取れれば、ひどいことをされるわけがありません。その場に留(とど)まって相手の言うとおりにしている間に「もっとひどいこと」をされてしまうのです。
●相手との距離をとるために、相手にダメージを与えましょう。それには、自分の武器を活用しましょう。女性はいっぱい身につけているじゃありませんか。
●長い爪(マニュキアがはがれることなど心配していてはだめです。爪はまた生えて来ますが、あなたの命は戻りません。犯罪者の顔を引っかきましょう。顔面がベストですが、どこでもかまいません。爪ほど相手にダメージを与える強力な武器はないのです。特に目に指を突っ込みましょう。少々狙いが外れても顔の上下左右に長く引っかくのです。いずれも一息で思い切ってやるのです。いつまでもじっとしていて引っかかれっぱなしというまぬけな犯罪者はいません)。
●ハイヒール。(自分の体重を掛けて相手の足をヒールで踏みましょう。背の低い女性でも、足元なら反撃できますね。また、ヒールで「金的蹴り」が最も有効です。今から練習しましょう)。
●バッグ。(ショルダーバッグなどはブンブン振り回すだけで、相当な武器になります。バッグを振り回しながら逃げて成功した、と言う声は多いです。振り回すと遠心力もつきますし、自分と相手との距離もできます)。
●指輪。(指輪をつけたまま、強くギュッと握手をしてみてください。指が痛いでしょう。この指でゲンコツを作ってください。それで相手の顔を「突く」のです。効き目があります。身長差で女性は下からが多いでしょう。下から顎を思いっきり指輪の拳で突き上げましょう。ゴリゴリ押すだけでもいいです)
●傘。(相手の身体の何処でも構いませんが、躊躇したら、相手に奪われてしまってこちらが傷つくことになってもいけません。しっかり閉じて、振り回すより、まず、「突く」のです。顔が難しかったら身体の真ん中めがけて突くとどこかには当たるでしょう)
●ヘアピン。(髪を後ろから掴まれた場合など、「あいたた」と髪に手をやればそこにはヘヤピンという武器が。これで相手の手や顔、届くところを「突き」ます。また長い髪を振り回して相手の目つぶしにすることもできます)
●ボールペン。(上手に使えればとても有効ですが、使い慣れないと、相手に奪われて逆に凶器として用いられることになってしまうので注意が必要です)
●自分でも使える技があります。しかし、どれも一瞬が勝負です。
平手打ち。拳骨(げんこつ)。脚蹴り(あしげり)など。これらは練習しないと使えませんから、今、実際にやってみましょう。手首ひねりや込み入った技は使えるようになるには相当の練習が必要です。
●平手打ち。(一発だけではなく、往復何度も、一息にやるのです。)
●金的蹴り。技の中でも最も有効なのは男性の急所(金的)にダメージを与えることです。ここは女性にとってよくわからない場所ですが、股(また)の間の奥、と頭にいれておけばいいでしょう。形や構造はどうなっているの?という興味もおありでしょうが、ボーイフレンドの協力を得られるひとは別ですが、たいていはわかりませんね。左右どちらを蹴ればいいか、前なのか後ろなのか、とにかく、足の付け根の身体の間を思いっきりダメージを与えるつもりで蹴り上げることが大切です。
実際に練習してみないと、場所を外しては役に立ちません。届いていないと何にもなりません。
ヒールでも普通の靴でも、靴が脱げてしまって素足でも、股の中を蹴り上げるという練習はいざと言うときに最も有効なのです。ちゃんと蹴りが当たれば相手は間違いなく動けないです。その間に逃げることができます。
手で「金的」をぎゅっと強く握るのも大変有効です。ですが、男性の急所を見たことも掴んだこともないひとが、いきなり素手で掴めるでしょうか。勇気が必要ですね。
まとめ-----------------
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反則技でいきましょう。かみつく、爪で引っかく、グリグリこする、平手打ち、髪の毛つかみなど、片っ端から活用しましょう。
A 相手から離れようとしない。相手の中に飛び込むつもりで、ぶつかっていきましょう。その後に、腕をつかんで離さないなど、逃げる機会も、防御の方法ものみこめてきます。まず、あわてないようにしましょう。
このほか、実技を織り交ぜながら、90分の講座は好評のうちに終了しました。暴漢役をこころよく引き受けてくださった事務職員の4人の巨漢(平均90キロ、身長175センチ)の方々、汗をかきながらのご協力をありがとうございました。
スタッフ8人以上、聴講され実践を体験学習された学生のみなさん、ご参加を有難うございました。是非、実践でお役に立てますように。